日本情報科教育学会は、皆様のご支援とご協力を得て、2007年12月に設立され、今年で18年目を迎えることができましたことを心より感謝しております。
本学会では、情報科教育の学術的研究を追究すると同時に、現場で“情報”を教える先生方を全力でサポートしていきたいと考えています。現在、情報科教育は新たな発展を遂げようとしています。現行の学習指導要領から、「情報Ⅰ」が共通必履修科目としてスタートし、すべての高校生に向けて授業が展開されています。また、発展的な選択科目である「情報Ⅱ」の重要性も認識され広がり始めています。そして、今年度の大学入学共通テストに、新たな教科として「情報」が追加され、科目として「情報Ⅰ」が導入されました。さらに、大学においても文系・理系を問わず、数理・データサイエンス、AIに関するカリキュラムが実施されるのが現在です。今や、情報科教育を中心に、学校教育の改革が進められていると言っても過言ではないと考えています。
高等学校における「情報」という教科は、2003年度(平成15年度)にスタートしました。本学会はそれにあわせ、準備期間を経て2007年に設立されたという経緯があります。それ以来、本学会をはじめ、情報科に関わってきたすべての人たちが長年にわたり提唱してきた「情報」の大学入試への導入がついに実現しました。今や、「情報」という教科で身に付ける資質・能力は、高等学校のすべての科目の学びを支える欠くことができない資質・能力であると考えられます。共通テストへの「情報Ⅰ」の追加は、これからの未来を生きる若者達が必要とする基礎的・基盤的な資質・能力を、文系・理系を問わず、すべての生徒が確実に身に付けていくための大きな第一歩と考えられます。さらに、本学会の存在意義が求められる時代に突入したと認識しております。
近年の生成AIの台頭に代表されるように、AIによって多くの仕事が代替されています。しかし、一方で、私たち人間はより高度な創造性、思考力、判断力を発揮し、テクノロジーと協力しながら、唯一無二の人間らしい仕事に挑まなければなりません。莫大な情報の中から真に重要な情報を主体的に選び、テクノロジーを駆使し、協働で問題解決に取り組む資質・能力が、これからの未来を切り拓くすべての人々に求められるものです。
日本の情報教育は、高校における情報科をハブとして、小学校から中学校、そして大学へと続くシームレスな学びへと発展・深化しました。小学校でのプログラミング必修化、GIGAスクール構想によるICT環境整備、中学校での高度なプログラミング教育、DXハイスクール――これらすべてが、一貫性のある学びを形作っています。これらの学びにおいて私たちは、「情報活用能力」を育成します。それは単なるICTの活用方法や情報技術の習得にとどまらず、学び、探究する力の基盤となる重要な資質・能力です。この資質・能力は、すべての教科等で学びの基礎となり、教科間の隙間をも埋め、協働的に学び、問題解決を行い、社会に参画していく上で欠くことができない国民的な素養そのものと言えるでしょう。
本学会では、高校の情報科の先生方と密な関係を築き、連携を深めることを心がけており、今年度は新たに、情報科教育連携委員会、情報科教員研修委員会、情報科入試委員会の3つの重点委員会を設け、それぞれが積極的な活動を展開しています。これら活動の一つ一つは小さいかもしれませんが、点と点がつながり線になり、それらが重なり合っていくことで連携が形成されるのだと考えています。今後とも、本学会の活動にご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
2025年3月
日本情報科教育学会
会長 森本 康彦