ご挨拶
日本情報科教育学会会長 森本 康彦
日本情報科教育学会は、皆様のご支援とご協力を得て、2007年12月に設立され、今年で16年目を迎えることができましたことを心より感謝しております。本学会では、情報科教育の学術的研究と追求すると同時に、現場で“情報”を教える先生方を全力でサポートしていきたいと考えています。
現在、情報科教育は新たな局面に立たされています。新学習指導要領により、「情報I」が共通必履修科目として生まれ、全国の高校生に向けて授業が展開されています。また、今年度から「情報II」も始まりました。そして、大学入学共通テストにも「情報I」が加わることとなります。さらに、大学においても文系理系を問わず、数理・データサイエンス、AIに関するカリキュラムが実施されるのです。
今後の超スマート社会「Society5.0」では、AIによって多くの仕事が代替される一方で、私たち人間はより高度な創造性、思考力、判断力を発揮し、テクノロジーと協力しながら、唯一無二の人間らしい仕事に挑まなければなりません。莫大な情報の中から真に重要な情報を主体的に選び、テクノロジーを駆使し、協働で問題解決に取り組む資質・能力が、これからの未来を切り拓くすべての人々に求められるものです。
日本の情報教育は、高校における情報科をハブとして、小学校から中学校、そして大学へと続くシームレスな情報教育の糸口となりました。小学校でのプログラミング必修化、GIGAスクール構想によるIT環境整備、中学校での高度なプログラミング教育――これらすべてが、一貫性のある学びを形作っています。これらの学びにおいて私たちは、「情報活用能力」を育成します。それは単なるICTの活用方法や情報技術の習得にとどまらず、学ぶ力の基盤となる重要な資質・能力です。この資質・能力は、すべての教科等で学びの基礎となり、教科間の隙間をも埋め、協働的に学び、問題解決を行い、社会に参画していく上で欠くことができない国民的な素養そのものと言えるでしょう。
本学会では、高校の情報科の先生方と密な関係を築き、連携を深めることを心がけており、今年度は新たに、情報科教育連携強化委員会、情報科教員養成研修委員会、情報科入試委員会の3つの委員会を設け、フォーラムや意見交換など積極的な活動を展開しています。これら活動の一つ一つは小さいかもしれませんが、点と点がつながり線になり、それらが重なり合っていくことで連携が形成されるのだと考えています。今後とも、本学会の活動にご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
(2023年5月)