• 会長のあいさつ

 2007年末に日本情報科教育学会を発足いたしました。本学会は、高校普通教科「情報」を中心に、中等教育と高等教育の接続性も踏まえた情報教育分野を研究対象とした学会であります。国策としても極めて重要な分野であり、また人材育成、情報に関わる文化の創造といったミッションもあります。

 

 インターネット技術の発展に伴って、いわゆる情報化社会から知識社会への変化は、目覚しいものがあります。そこでは、常に新しい知識が生まれ、その流通は急速です。教科書的な知識は重要であるけれども、それをどう活用し、問題解決を図るかという実際的能力(コンピテンシー)がより重要になってきています。

 

 教育の基本的考え方として、特にカリキュラム論から見たとき、ラテン語の"Tabula Rasa"、つまり人間がこの世に真っ白な状態で誕生し、知恵をつけていく過程において、何を教えるべきかという議論で、基本的には形式陶冶と実質陶冶論というのがあります。俗にいう読み、書き、そろばん(3Rs)論は両者を旨く反映した教科論です。中世、近代ヨーロッパ社会においては、エリート層はラテン語、ギリシャ語、論理学を中心に学んだといいます。これは、形式陶冶論に依拠した考え方であります。一方、実学を重視した実質陶冶論の立場では、元来、工学、医学はその最たるものと思われますが、その精神の持ち主はレオナルド・ダ・ビンチであるといわれています。

 

 少子化、グローバル化、語学的(英語)ハンディキャップ、アジア各国の追い上げなど内部・外部環境は極めて厳しい状況にありますが、教育制度のあり方も変革の時期にきているのかもしれません。情報化は目に見えにくい知恵の生産技術であり、気がついた頃には、後進国に成っていたと言うことのないよう、国家レベルにおいても、骨太の国家戦略が求められましょう。高等教育のレベルにおいても、骨太と多様性(柔軟性)を持ったシステムが求められています。

 

 高校普通教科「情報」をコアにしながら、情報の科学・技術的事項、その発展に伴って社会の構造の変化とその特質、さらに人間との関係などを体系的に”学”として探究していく教育系の学会であります。興味・関心のある方々の入会をお誘いし、健全な学会の構築に全員で努力していきたく思う所存であります。何とぞ、ご支援下さるようお願い申し上げます。

日本情報科教育学会会長  岡本 敏雄